- TOP >
- お口と身体の関係
お口の病気はむし歯や歯周病だけではありません
歯科医院で治療する病気はむし歯や歯周病だけではありません。お口にはさまざまな役割があり、その中の一つは「食べること」ですが、咬み砕いた物を「飲み込むこと」も大切です。
飲み込みがうまくいかないと食べ物が気管に入って「誤嚥(ごえん)」を起こしたり、唾液の分泌量が低下して「ドライマウス」、「歯ぎしり」や「食いしばり」などが起きたりします。
これらの症状でお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。
誤嚥(ごえん)性肺炎
誤嚥とは、摂取した食べ物をうまく食道に飲み込めず、気道のほうに飲み込んでしまうことです。気道に異物が入ると、通常は反射機能がはたらいて、むせて気管から異物を排出します。しかし、反射機能が衰えて誤嚥を起こしてしまうと、気管や肺炎に炎症を起こす引き金になります。誤嚥性肺炎とは、誤嚥によって起こる肺炎です。
お口の中が不衛生でむし歯や歯周病の原因菌が多いうえに、抵抗力が弱くなっていて、誤嚥を起こしやすい状態では、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。とくに高齢者の場合には重篤な状態を招く危険性があるので注意が必要です。
誤嚥性肺炎の典型的なサイン
とくにご高齢の方に次のような症状がある場合には、誤嚥性肺炎かもしれませんので医療機関にご相談ください。
- 発熱
- 激しい咳(せき)と色の濃い痰(たん)
- 荒い呼吸
- 肺雑音
気をつけたい日常の症状
ご高齢の方の次のような変化には、さまざまな原因が考えられます。肺炎もその中の一つですので、注意してください。
- 元気がなくなってきた
- 食事時間が長くなってきた
- 食後、ぐったりと疲れている
- ボーっとしている時間が長くなった
- 失禁するようになった
- 口の中の食べ物をなかなか飲み込まない
- 体重が減ってきた
- 夜間に咳き込む
ドライマウス
ドライマウスとは、唾液の分泌量が少なくなり、お口の中が乾燥することです。唾液は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3つの大唾液腺と舌や上顎にある多数の小唾液腺から分泌されます。健康な成人が分泌するのは1日になんと1~1.5リットルです。何らかの原因で唾液の分泌量が少なくなるとさまざまな症状があらわれます。
ドライマウスチェック
次のような症状がある場合にはドライマウスかもしれません。気になる方はお気軽にご相談ください。
- 口の中が渇く
- パンやビスケットなど乾いた食品が食べにくい
- 口の中がパサパサ、ネバネバする
- 味覚の好みが変わった
- 味を感じにくい
- 口の中がヒリヒリする
- 入れ歯が痛い
- 口臭が強くなってきた
唾液分泌が低下する理由とおよぼす影響
唾液が減ってしまう理由はさまざまです。一般的に夜になると唾液の分泌量は低下しますので、口腔内の細菌が増殖します。すると口臭やむし歯、歯周病のリスクが高まりますので、就寝前と朝起きたときの口腔ケアが大切です。
そのほか、唾液が減少する原因として、ストレスや不規則な生活習慣、お口まわりの筋力低下などがあり、薬の副作用や糖尿病などの病気との関連も原因として疑われます。また、加齢や口呼吸、喫煙習慣も唾液減少の引き金になります。
また、唾液にはお口の自浄作用があるので、唾液が減ってしまうと、むし歯や歯周病、口臭や口内炎などのトラブルに見舞われる心配もあります。そのほか、入れ歯が当たる部分が痛むこともあります。さらに食べ物を飲み込みにくくなり、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。
唾液の8つの役割
唾液の99%は水分ですが、残りの1%には免疫や抗菌作用、そして消化などに関わる重要な成分が含まれます。唾液はお口の中を潤すだけでなく、さまざまな作用でお口のトラブルを予防しているのです。ここでは唾液の役割を8つご紹介します。
- 自浄作用:お口の中の食べカスや歯垢(プラーク)を洗い流します
- 抗菌作用:お口の中の細菌の増殖を抑えます
- pH緩衝作用:飲食により酸性に傾いた口腔内を中和させます
- 再石灰化作用:脱灰して溶け出した歯の表面の成分をふたたび歯の表面に定着させる再石灰化を促します
- 消化作用:酵素アミラーゼがでんぷんを分解し消化を助けます
- 粘膜保護・潤滑作用:粘性のあるムチンが粘膜を保護し、発声をスムーズにします
- 溶解・凝集作用:咬み砕いたり、味を感じさせたり、飲み込んだりしやすくします
- 粘膜修復作用:上皮成長因子と神経成長因子が粘膜の傷を治します
唾液の分泌を促進させる4つの方法
- よく咬んで食べる
- しゃべる、歌うなどで口のまわりの筋肉を動かす
- 口の中を清潔にする
- 唾液腺マッサージを行う
気になる症状がある方は、お気軽に当院にご相談ください。
歯ぎしり・食いしばり(TCH)
無意識のうちに上の歯と下の歯を接触させる癖のことを歯ぎしり・食いしばりといいます。本来、私たちは、一日のほとんどの時間、上下の歯を咬んでいません。上下の歯が接触するのは、食べ物を咬んだり、飲み込んだりするときだけです。睡眠中にグッと強く咬みしめることを「歯ぎしり」といい、起きているときは「食いしばり」といいます。ほかにもテレビを見たり、仕事をしたりと何かに集中しているときに上下の歯を接触させることも歯ぎしり・食いしばりです。
歯ぎしり・食いしばりを起こしていると、歯が摩耗したり、ヒビが入ったり、欠けてしまったりします。歯のあちこちが「しみる」場合は、歯ぎしり・食いしばりによって引き起こされているのかもしれません。大切な歯の健康が損なわれてしまい、また顎にも大きな負担がかかり、顎関節症や肩こり、首こりを引き起こすこともあります。
歯ぎしり・食いしばりが引き起こす可能性のある8つの症状
- 歯の上の面がすり減っている
- 歯の側面が欠けて細くなっている
- 歯の根元が欠けている
- 歯がしみることがある
- 奥歯で咬むと瞬間的に痛みが走ることがある
- 朝起きたときに顎がだるかったり、首筋が張っていたりする
- 何かに夢中になっているときに、歯を咬みしめていたり、舌を上顎に吸いつけていたりすることがある
- 頬のまわりの筋肉がいつも緊張している
歯ぎしり・食いしばりの改善法
「咬みしめ」や「食いしばり」を防ぐために続けていただきたいのが、「唇を閉じて、歯を離す感覚を覚えること」です。唇を閉じて、上下の歯を離し間隔を開けてください。そして顔の筋肉の緊張をほどき、力を抜いてください。一日に何度も、気づいたときに練習しましょう。顎関節とお口まわりの筋肉がリラックスすると、緊張とこわばりから解放され、お口の中の知覚過敏を軽減し、さらには歯の健康寿命を延ばすことにもつながります。